神経発達症(旧発達障害)や精神疾患を持つ学習者さんの学習活動について議論されることが以前にもまして増えたように思います。学習塾においても単なる一般的な社会的事象のひとつという他人事のような姿勢でなく、直接に指導する立場として障害や疾患を有する方たちの学習活動をどうのように援助していくのか、日々考え指導を工夫しなければならないと考えています。
このような方たちにとって過度にストレスがかからない、過重に要求されることがないという前提で、着実に読んでいけるという実感を与えてくれる読解トレーニングは相当程度の効果を発揮します。適切なトレーニングであれば、その際中に発揮される集中力は一般的なものより高く、それに比例して学習効果も上がります。一方的に解説をされ覚えることを押し付けられる授業ではなかなか困難でしょう(昨今そのような指導はむしろ珍しいですが)。一にも二にも講師と一緒に読解のトラックを走っていく体験はかけがえのないものとなるでしょう。
もちろんその前提として指導を実施する側が学習者さんたちの状況を十分に理解している必要があります。学習者さんの置かれた状況を適切に理解できていない中で、やみくもに指導を試みても、何の効果もないばかりか、良かれと思って行った指導がむしろマイナスに働き、学習者さんを学習から遠ざける結果にもなりかねないからです。
弊塾は障害や疾患を有する学習者さん達向けの専門の学習塾ではありません。ただ入塾を希望される方たちにはできる限りのことをしたいと考えています。
ただ残念ながら、抱えている特性についての情報を伏せたままで入塾させる保護者の方々がいらしゃいます。その場合、講師が予想さえしない事態が発生することが多く、指導内容も本来の目的から逸れざるを得なくなることがあります。学力の向上を目指して指導を進める学習塾としても悩ましい限りです。
講師のことばの行間を読み取れなかったり、忘れ物が度重なったり、集中力を欠くという程度のことであれば指導計画の修正で乗り切ることは可能だと思います。しかし、指導中に意識がなくなったり、身体的な発作・硬直が起きたり、人格の入れ替えが起きたり、極度のうつ状態になる等の事態が発生した場合、厳しい言い方とは思いますが、保護者様の姿勢としてどうなのだろうと思ってしまいます。
障害や疾患の事実に触れることはあまりに繊細な事柄だと認識しています。しかし、学習指導はそのような特性そのものに密接に関与する活動であり、指導する立場にある講師はその属性に足を踏み入れることさえあることをご理解いただきたいと思います。弊塾への入塾に際しましては、学習者さんの特性の一部でもお伝えいただくことをお願いしたいと思います。