日本語の文章の内容をくみ取る時、みなさんは文頭から文末へと読み下して理解していると思います。そうすることになんの迷いも感じていないはずです。
英文の内容を理解する場合でも、それはまったく同じはずです。しかし、どの英語学習者も実際にそれを行っているかというと実情はそうではないかも知れません。
以下の例文は2022年度の新潟大学の入試問題からのものです。全体としても難解なところはありません。
1. 前置詞で英文を分割できる場合
(A) Do the dead have a place in the world of the living?(2022年度新潟大学)
英語の基礎ができている人は、読み終わった瞬間に、「了解です。」ということで理解完了です。それで結構です。なにも言うことはありません。
一方で、英語学習の途上にあり、日々英文の理解に取り組んでいる人は、どうしても日本語に移し替えて理解しようとします。そのような方に、内容を言ってもらうと…
「死者たちは生きている人間たちの世界に居場所があるのだろうか。」
みたいな和訳を「整いました!」という勢いで言ってきます。別に悪いことはないですが、いったい何回読み返して、そしてどれだけ必要以上の時間をかけて日本語を整えているのかと考えてしまいます。
(B) Do the dead have a place / in the world of the living?
「死者たちは居場所があるのだろうか / 生きている人間たちの世界に。」
せめて前置詞( in )の前で区切りのスラッシュ( / )を入れて分割し、文頭から文末へと読み下してもらいたいと思います。(A)と(B)で理解にかかる時間差は馬鹿になりません。その馬鹿な時間差は無くすに越したことはないと思います。そしてゆくゆくは英文のまま理解できるようになってほしいと思います。
2. 接続詞で英文を分割できる場合
(A) Gohori remembered that she was expressing her worries to her husband over whether she could be of any help to the researchers.(2022年度新潟大学)
これについても、もし丁寧に和訳をつくるとすると次のようになると思います。
「郷堀は彼女が自分がその研究者たちに助けとなることができるだろうかということについて彼女の夫に懸念を語りかけていたことを覚えていた。」
読み戻りの波状攻撃です。それにしても3つのSV構造を持つ英文を日本語に整えるのはかなりの骨折りでしょう。
翻訳を作っているのではないのですから、そんなことは止めましょう。
(B) Gohori remembered / that she was expressing her worries / to her husband / over whether she could be of any help / to the researchers.
「郷堀は覚えていた / 彼女が懸念を語りかけていたことを / 彼女の夫に / 彼女が助けとなることができるだろうかということについて / その研究者たちに。」
接続詞( that, whether )の前にスラッシュを入れ、さらに2か所の前置詞( to )の前にもスラッシュを入れればすっきりとわかり易くなります。日本語としてぎこちないかも知れませんが、それは日本語で内容を言っているからです。これについても最終的には英語のままで理解できるようになることを目指して日々研鑽を積めばいいのだと思います。
3. to不定詞で英文を分割できる場合
(A) I was surprised to see her talking as if her late husband was right there,”…(2022年度新潟大学)
「私は彼女がまるで彼女の亡き夫がまさにそこにいるかのように話しているのを目にして驚いた」
日本語で上のような訳をつくるというのは、物語を語っているのと同じで、大変なエネルギーを消費します。to不定詞の副詞的用法の理解とか、as if, even if, even though, as thoughの区別などが身についているだけでも立派ですが読み戻りは自己満足の極みです。
(B) I was surprised / to see her talking / as if her late husband was right there,”…
「私は驚いた / 彼女が話しているのを目にして / まるで彼女の亡き夫がまさにそこにいるかのように。」
日本語で内容を言っているのでぎこちないのは百歩譲ってください。この流れで、最終的に日本語で考えなくても良いようになればOKなのです。
節や句の切れ目にスラッシュを入れるというとても単純な作業ですが、中学生と高校生を問わず指導を受けた方たちからは、英文を随分と容易に読めるようになったという声が返って来ます。みなさんもひと工夫して英文を文頭から文末へと自然に理解できるようになりましょう。
こういう何気ない作業の繰り返しがいつか実を結び、共通テストの英語も80分でゆとりで読み切れ、国公立大学二次と私立大学の一般入試の問題もすらすらと解ける力となるのだと思います。だれでもできることです。要は反復の習慣化だと思います。塾や予備校はそういうことを偉そうに教えますが、自力でも十分にできます。みなさん、がんばって勉強しましょう。