日本語の構造に従っている限り英文を頭から読み下ろすことはできません。日本語の縛りから多少とも自由になり英文の流れに従って内容をくみ取りましょう。そのためには、当面スラッシュ( / )を効果的に用いると良いでしょう。スラッシュを入れた個所は読み戻らない習慣をつける。もちろんスラッシュが意識にしみ込んでしまえば、いちいち英文に書き込む必要はなくなります。そうなるまでの過渡的な手段と思えば良いでしょう。

次の例文は英語検定2級2016年第3回の第3問Bの第1段落です。各英文には便宜的に番号を振りました。

①People around the world are living longer. ②One problem that affects many older people, though, is memory loss. ③Usually, this is just an inconvenience, but it can be a sign of brain disease. ④Scientists have been studying the brains of people suffering from memory loss in the hope of finding a way to treat the problem. ⑤Researchers at Northwestern University in Chicago, however, decided to take a different approach. ⑥They began looking at the brains of people who still have strong and healthy memories even as they get older.

1. SとVが分かれば問題なしの場合

①( People / around the world ) are living longer.

先ず文頭の名詞はSが確定です。迷いなく ( People… と主語始まりのカッコを付けましょう。時制を持っている動詞の部分をVとし下線を引きますが、Vが発生する直前がSの終了なので …the world ) are living と主語終わりのカッコで閉じます。主語が長いと感じるなら … / around the world というふうに前置詞の前でスラッシュを入れても良いと思います。いずれにせよ問題のない文章です。SとVについては別のページで説明しています。そちらを見てください。

2. 関係代名詞や挿入部にスラッシュを入れる場合

②( One problem / ( that ) affects many older people ), / though, / is memory loss.

迷いなく ( One problem …と主語始まりのカッコを付けることから始まります。問題はSをいつ閉じるかです。意識のブレスが短かったり、文法に配慮しないような性急な学習者は ( One problem ) とつけてSを早く終わらせたいという意識に駆られます。その瞬間に「ひとつの問題は…」の主格を表す勝手な助詞「…は」が発生し誰かから指摘を受けない限り、学習者にはその解釈の仕方を修正する手立てはありません。

関係代名詞の that も立派な名詞で、主語になる資格を持っていて、affects と結びついてSVを構成しています。ここでは( One problem / ( that ) affects …というふうに that の前に自信をもってスラッシュを入れ that と affects のSV関係も明確にしましょう。

視線を右方向に移すと 時制を持つ is が存在しますが、though は副詞ですので前後にスラッシュを入れ挿入扱いとします。すると is の直前は people となり、…many older people ), / though, / is memory loss. と people 後を主語終わりのカッコで閉じ is を V とします。

回りくどいけど…

3. 複数のSV構造をスラッシュで区切る場合

③Usually, ( this ) is just an inconvenience, / but ( it ) can be a sign of brain disease.

and, but, or, for, so 等の等位接続詞であれ、when, if, because, that 等の従属接続詞であれ、また関係詞の節であれ、複数のSVがある場合は、それらの接続詞や関係詞の前にスラッシュを入れます。簡単な話ですが、従属接続詞に関しては読み戻りたがる人は意外と多いようです。

4. 名詞と分詞( 現在分詞、過去分詞 )の間にスラッシュを入れる、前置詞句の前にスラッシュを入れる、to 不定詞の副詞的用法・形容詞的用法の前にスラッシュを入れる場合

④( Scientists ) have been studying the brains of people / suffering from memory loss / in the hope of finding a way / to treat the problem.

指導する側から言ってしまえば、分詞の後置修飾ということになります。例えば、many people( 多くの人々 )と suffering people( 苦しんでいる人々 ) の展開には違和感を感じる学習者はそれほどいないと思います。形容詞の many と同様に現在分詞の suffering も流れから言って people を修飾できると理解することにハードルはありません。

だからといって suffering people が大丈夫なら suffering from memory loss people も良いだろうにはなりません。現在分詞が他の語も伴っていれば、名詞の前ではなく名詞の後にぶら下げる語順になります。この場合、people / suffering from memory loss と名詞と分詞の間にスラッシュを入れた方が良いと思います。

people / suffering from memory loss は、日本語で言ってしまえば「記憶の後退に苦しむ人々」となりますが、できれば「人々 / 記憶の後退に苦しむ」で前から読み下ろしてほしいと思います。アウトなのは「人々は記憶の後退に苦しんでいる」と妙なSV構造を日本語でつくりあげてしまうことです。英文を解釈できなくなる原因の代表格です。

次に前置詞の前にスラッシュを入れる場合です。時や場所を表す場合はお好きなようにしてもらって良いと思います。ただ今回のように in the hope of … (…を願って、…を期待して)のような前置詞で始まるフレーズを形成しているならスラッシュを入れることをお勧めします。

5. Sが長めだけれど、SとVが分かれば問題なしの場合

⑤( Researchers / at Northwestern University / in Chicago), / however, / decided to take a different approach.

主語が長めだということです。視野の広い学習者は主語を確認した瞬間に理解終了です。丁寧な理解を必要とする学習者はSのカッコの中でもためらわずスラッシュを入れて結構だと思います。

6. 名詞 and 名詞や形容詞 and 形容詞はスラッシュをお勧めしない場合

⑥( They ) began looking at the brains of people / ( who ) still have strong and healthy memories / even as ( they ) get older.

and を見つけるとスラッシュを入れたくなります。接続詞としての分かりやすさに起因するものですが、名詞と名詞、形容詞と形容詞を並列に接続する程度のものであればスラッシュを入れないに越したことはありあません。上記の英文の場合、 strong も healthy もmemories を修飾しているに過ぎないので放置しましょう。そこよりも優先するSVスラッシュに目を向けましょう。

以上です。言い方の違いはあったとしても、たいていどこの塾でも教えていることです。偉そうな話はひとつもありません。ひとりでもやれることばかりです。みなさんがんばって勉強しましょう。